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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁

青空文庫

「ちょっと、あんた!………」

その晩彼女は、蚊帳の中に這入ってから又始めた。

「ちょっと、此方向きなさい。」

「ああ、僕眠たい、もう寝さして。………」

「あかん、さっきの話きめてしまわなんだら、寝させへん。」

「今夜に限ったことあるかいな、明日にして。」

表は四枚の硝子戸にカーテンを引いてあるだけなので、軒燈のあかりがぼんやり店の奥へ洩れて来て、もやもやと物が見える中で、庄造は掛け布団をすっかり剥いで仰向きに臥ていたが、そう云うと女房の方へ背中を向けた。

「あんた、そっち向いたらあかん!」

「頼むさかいに寝さしてエな、ゆうべ僕、蚊帳ん中に蚊ア這入っててちょっとも寝られへなんでん。」

「そしたら、わての云う通りしなはるか。早う寝たいなら、それきめなさい。」

「殺生やなあ、何をきめるねん。」

「そんな、寝惚けたふりしたかて、胡麻化されまっかいな。リリー遣んなはるのんか孰方だす? 今はっきり云うて頂戴。」

「明日、―――明日まで考えさして貰お。」

そう云っているうちに、早くも心地よさそうな寝息を立てたが、

「ちょっと!」

と云うと、福子はムックリ起き上って亭主の側にすわり直すと、いやと云う程臀の肉を抓った。