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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁
と、皮肉交りに云われそうなのが業腹で、つい延び延びにしていたのである。しかし戻っているとしたら、此方の通知を待つ迄もなく、向うからも挨拶がありそうなものだのに、何とも云って来ないのをみると、何処かにまごついているのであろうか。尼ヶ崎の時は、姿が見えなくなってから一週間目に戻ったと云うのだが、今度はそんなに遠い所ではないのだし、つい三日前に通って来たばかりの路なのだから、よもや迷うことはないであろう。ただ近頃は耄碌していて、あの時分よりはカンも悪く、動作も鈍くなっているから、三日かかるところが四日かかるようなことはあるかも知れない。そうだとしても、おそくも明日か明後日のうちには無事に戻って行くであろう。するとあの二人がどんな喜びようをするか。そしてどんなに溜飲を下げるか。きっと塚本さんまでが一緒になって、「それ見ろ、あれは亭主に捨てられるばかりか、猫にまで捨てられるような女だ」と云うであろう。いやいや、階下の妹夫婦もお腹の中ではそう思うであろうし、世間の人がみんな笑い物にするであろう。
その時、しぐれがまた屋根の上をパラパラと通って行った後から、窓のガラス障子に、何かがばたんと打つかるような音がした。