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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁
まだ庄造が前の女房の品子と暮していた時分、品子がときどき猫のことで焼餅を焼く話を聞くと、福子は彼女の非常識を笑って、嘲弄の種にしたものだった。そのくらいだから、勿論庄造の猫好きを承知の上で来たのであるし、それから此方、庄造ほど極端ではないにしても、自分も彼と一緒になってリリーを可愛がっていたのである。現にこうして、三度々々の食事には、夫婦さし向いのチャブ台の間へ必ずリリーが割り込むのを、今迄兎や角云ったことは一度もなかった。それどころか、いつでも今日のような風に、夕飯の時にはリリーとゆっくり戯れながら晩酌を楽しむのであるが、亭主と猫とが演出するサーカスの曲芸にも似た珍風景を、福子とても面白そうに眺めているばかりか、時には自分も餌を投げてやったり跳び着かせたりするくらいで、リリーの介在することが、新婚の二人を一層仲好く結び着け、食卓の空気を明朗化する効能はあっても、邪魔になってはいない筈だった。とすると一体、何が原因なのであろう。つい昨日まで、いや、ついさっき、晩酌を五六杯重ねるまでは何のこともなかったのに、いつの間にか形勢が変ったのは、何かほんの些細なことが癪に触ったのでもあろうか。