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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《猫と庄造と二人のおんな(ねことしょうぞうとふたりのおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 頁
」
と、ジャブジャブ云う音がふいと止まって、
「何やて?」
と、母親のしっかりした声が障子越しに聞えた。
「僕、ちょっと其処まで行って来るよってに―――」
「何処へ?」
「つい其処や。」
「何しに?」
「そないに執拗う聞かんかて―――」
そう云って、一瞬間むっとした顔つきで、鼻の孔をふくらましたが、直ぐ又思い返したらしく、あの持ち前の甘えるような口調になって、
「あのなあ、ちょっと三十分ほど、球撞きに行かしてくれへんか。」
「そうかてお前、球は撞かんちゅう約束したのんやないか。」
「一遍だけ行かしてエな。何せもう半月も撞いてエへんよってに。頼みまっさ、ほんまに。」
「ええか、悪いか、わてには分らん。福子のいる時に、答えて行っとくなはれ。」
「何でエな。」
その妙に力張ったような声を聞くと、裏口の方で盥の上につくばっている母親にも、忰が怒った時にするだだッ児じみた表情が、はっきり想像出来るのであった。
「何で一々、女房に答えんなりまへんねん。ええも悪いも福子に聞いてみなんだら、お母さんには云われしまへんのんか。」
「そうやないけど、気をつけてて下さいて頼まれてるねんが。」
「そしたらお母さん、福子の廻し者だっかいな。