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げんかぶんだんとたんていしょうせつ
現下文壇と探偵小説
平林 初之輔
線上閱讀平林 初之輔《現下文壇と探偵小説(げんかぶんだんとたんていしょうせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,026 字 · 8 頁
というのは、探偵小説という一つのカテゴリーが、現在では既に動かすべからざる存在だからである。これは私の趣味からそう言っているのではない。私はむしろ、探偵的というような特殊な価値よりも、もっと広い芸術的な価値に富む作品を好むのであるが、探偵小説が独自の存在権をもつとすれば、探偵小説をして探偵小説たらしむる特殊の価値を重視しなければならないという理論的要請を無視するわけにゆかないからだ。サイダーと紅茶とを両方とも飲み物であるからといって、二つの価値の優劣を同じ尺度できめるわけにいかないのと同じ道理である。
仮に佐藤春夫が小説家として非常にすぐれていて、時に探偵小説的作品も書くけれども、それは探偵小説としてはあまりすぐれていないとする。また大下宇陀兒が、探偵小説だけはすぐれたものを書くけれども、他の小説は全く駄目だとする。これは例にあげた二人には申し訳ないが、私はここで事実を指摘しているのではなくて、ただ仮定しているだけである。いま例にあげた二人の場合、実際はそうでないとしても、こういう場合は実際にはあり得ることである。それはモーリス・ルブランとたとえばチェスタトンとを例にあげてもよい。