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こはくのパイプ
琥珀のパイプ
甲賀 三郎
線上閱讀甲賀 三郎《琥珀のパイプ(こはくのパイプ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 頁
さてこの自警団は幾日か経ってゆく内に、漸く人心も落ち着いて来て、何時か兇器を持つ事を禁ぜられ、やがて昼間の警戒も廃せられたが、さて夜の警戒と云うものは中々止めにならないのである。つまり自警団がいつか夜警団となった訳で幾軒かのグループで各戸から一人宛の男を出し、一晩何人と云う定めで、順番にそのグループの家々の周囲を警戒するので、後には警視庁の方でも廃止を賛成し、団員のうちでも随分反対者があったのであるが、投票の結果は何時も多数で存続と定まるものである。私の如きも××省の書記を勤め、もうやがて恩給もつこうと云う四十幾つの身で、家内のほかに男とてもなし、頗る迷惑を感じながら、凡そ一週間に一度は夜中に拍子木を叩かねばならないのであった。
さてその夜の話である。十二時の交替頃から暴風雨はいよ/\本物になって来た。私は交替時間に少し遅れて出て行くともう前の番の人は帰った後で、退役陸軍大佐の青木進也と、新聞記者と自称する松本順三と云う青年との二人が、不完全な番小屋に外套を着たまゝ腰をかけて待っていた。この青木と云うのは云わばこの夜警団の団長と云う人で、記者は――多分探訪記者であろう――私の家の二三軒さきの家へ下町から避難して来ている人であった。