輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ことのそらね
琴のそら音
線上閱讀夏目 漱石《琴のそら音(ことのそらね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,985 字 · 42 頁
両方共何とも答をしない。
「実は今ここを巡行するとね、何だか黒い影が御門から出て行きましたから……」
婆さんの顔は土のようである。何か云おうとするが息がはずんで云えない。巡査は余の方を見て返答を促す。余は化石のごとく茫然と立っている。
「いやこれは夜中はなはだ失礼で……実は近頃この界隈が非常に物騒なので、警察でも非常に厳重に警戒をしますので――ちょうど御門が開いておって、何か出て行ったような按排でしたから、もしやと思ってちょっと御注意をしたのですが……」
余はようやくほっと息をつく。咽喉に痞えている鉛の丸が下りたような気持ちがする。
「これは御親切に、どうも、――いえ別に何も盗難に罹った覚はないようです」
「それなら宜しゅう御座います。毎晩犬が吠えておやかましいでしょう。どう云うものか賊がこの辺ばかり徘徊しますんで」
「どうも御苦労様」と景気よく答えたのは遠吠が泥棒のためであるとも解釈が出来るからである。巡査は帰る。余は夜が明け次第四谷に行くつもりで、六時が鳴るまでまんじりともせず待ち明した。
雨はようやく上ったが道は非常に悪い。足駄をと云うと歯入屋へ持って行ったぎり、つい取ってくるのを忘れたと云う。