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しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

線上閱讀岡本 かの子《生々流転(しょうじょうるてん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 297,521 字 · 586 頁

青空文庫

まあこれからも何かとあることゆえ、親御さまたちにあんまり心配をかけなさいますな」

そういうかと思うと、腕時計を見て、

「こいつはいけない。では、いずれ」

と言って恭しく頭を下げると、暗澹として来た空を仰ぎ/\「おきみ、傘借せ」と玄関の方へ去って行きました。

わたくしは、おきみが座にいないのを好都合にして、眉を顰めながら、

「あの人、随分変ってますね」

と池上に言いました。すると池上は、酒の疲労と共に、首を前に落して深い想いに沈んでいるようでしたが、わたくしの言葉に「え」と言って身体を坐り直して、

「あれかい。ありゃあゝいうものさ」

と答えました。わたくしは言葉を重ねて、

「なんて、旧いんでしょう」

と言いますと、池上は首を振って、

「いゝや、そうとも言えない」

いくら種子は旧くても、その単純卒直さに直ぐ手足が着いてるところは、ひょっとしたら旧くないかも知れんぞと言いました。

嘉六は小僧時代に習った漢字教訓を一生の金科玉条として、すべてこれによって方針を立てる。例えば、今から二十年ほどまえまでは池上の店で店長の食事の賄には、店の守神に忌みあるを嫌って、獣肉を一切使わせなかった。