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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《生死卍巴(せいしまんじどもえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 頁

青空文庫

恥かしいとも思わずに、あらわな脛で立ち上ると、あらわな脛でその侍女は走った。

もう一人の侍女が地に仆れた。その瞬間に握ったのでもあろう、起き上った時に右の手に、野茨の花を握っていた。枝も一緒に握ったものと見えて、その枝の刺に刺されたらしく、指から生血がにじみ出ていた。しかし彼女は夢中だと見えて、枝つきの野茨を捨てようともせずに、血を流したままでひた走った。

と、もう一人の侍女が仆れた。仆れた所に石があったと見える、それで後脳を打ったと見える、仆れたままで悲鳴を上げて、両手で後脳を抱えるようにして、ゴロゴロと地上を転がった。が、それでも飛び起きると、解けて乱れてバラバラになった、長い髪を背後へなびかせたままで、先へ先へとひた走った。

「オ――イ! オ――イ! オ――イ! オ――イ!」

呼びながら侍女達は走って行く。

こうして半里は走ったであろう、侍女達はすっかり疲労した。

飛騨という山国へ別天地を創って、そこに住んでいる女達である。都会の華奢な女などとは、体格においても著しく強く、曠野や山道を走ることにかけても、遥かに勝れてはいるのであったが、お嬢様の小枝を丹生川平の者に、誘拐されようとした時に、女ながらも命限りに、丹生川平の若者達と、争って充分疲労ていた。