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いなかきょうし

田舎教師 他一編

田山 花袋

線上閱讀田山 花袋《田舎教師 他一編(いなかきょうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,097 字 · 312 頁

青空文庫

その店の婆さんに娘が一人あって東京の赤坂に奉公に出ていることも知っている。

関東平野を環のようにめぐった山々のながめ――そのながめの美しいのも、忘れられぬ印象の一つであった。秋の末、木の葉がどこからともなく街道をころがって通るころから、春の霞の薄く被衣のようにかかる二三月のころまでの山々の美しさは特別であった。雪に光る日光の連山、羊の毛のように白く靡く浅間ヶ嶽の煙、赤城は近く、榛名は遠く、足利付近の連山の複雑した襞には夕日が絵のように美しく光線をみなぎらした。行田から熊谷に通う中学生の群れはこの間を笑ったり戯れたり走ったりして帰ってきた。

熊谷の町はやがてその瓦屋根や煙突や白壁造りの家などを広い野の末にあらわして来る。熊谷は行田とは比較にならぬほどにぎやかな町であった。家並みもそろっているし、富豪も多いし、人口は一万以上もあり、中学校、農学校、裁判所、税務管理局なども置かれた。汽車が停車場に着くごとに、行田地方と妻沼地方に行く乗合馬車がてんでに客を待ちうけて、町の広い大通りに喇叭の音をけたたましくみなぎらせてガラガラと通って行った。夜は商家に電気がついて、小間物屋、洋物店、呉服屋の店も晴々しく、料理店からは陽気な三味線の音がにぎやかに聞こえた。