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いなかきょうし

田舎教師 他一編

田山 花袋

線上閱讀田山 花袋《田舎教師 他一編(いなかきょうし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,097 字 · 312 頁

青空文庫

ここの主僧がまだ東京にいるころは、ことにこの人の世話になって、原稿を買ってもらったり、その家に置いてもらったりした。

「もう今日は行かれませんな」

「そう、馬車はありませんしな、車じゃたいへんですし……それに汽車に乗っても、あっちへ着いてから困るでしょう」

主僧は考えて、

「明日にしましょうかな」

「明日でいいなら――明日朝の馬車で久喜まで行って、奥羽線の二番に乗るほうがいいですな」

「行田から吹上のほうが便利じゃないでしょうか」

「いや、久喜のほうが便利です」

と荻生君は言った。

主僧はそれと心を定めたらしく、やがて、「人間というものはいつ死ぬかわかりませんな」と慨嘆して、

「ちょっと病気で病院にはいってるということは聞きましたけれど、死ぬなどとは夢にも思わなかったですよ。先生など幸福ではあるし、得意でもあるし、これからますます自分の懐抱を実行していかれる身なんですから」こう言って、自分の田舎寺に隠れた心の動機を考えて、主僧は黯然とした。

「世の中は蝸牛角上の争闘――私は東京にいるころには、つくづくそれがいやになったんですよ。人の弱点を利用したり、朋党を作って人をおとしいれたり、一歩でも人の先に出よう出ようとのみあくせくしている。