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ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,494 字 · 67 頁
しかしお菊はにこりともしなかった。小石川の伯母様の名を聞くと共に、彼女の白い顔は水のようになった。彼女は唇をきっと結び締めながら、奥へ起って行った。
お客の給仕は彼女の役目であるので、お菊はすぐに茶の支度にかかった。彼女が茶を立てて座敷へ運び出した時には、来客の真弓は主人の播磨と向い合って、何か打解けて話していた。奴どもが恐れているようなお叱言も、きょうは余り沢山に出ないらしいので、お菊も少し安心したが、彼女としてはまだほかに大きい不安が忍んでいた。
「ほほ、菊。相変らず美しいの」と、真弓はほほえみながら給仕の若い女を見返った。「主人が独身では、とかくに女子どもの世話が多かろう。もう少しの辛抱じゃ。頼みますぞ」
「はい」と、お菊はしとやかに手をついていた。もう少しの辛抱――それが彼女の耳には怪しく響いて、若い胸には浪を打った。
「用があれば呼びます。退ってくりゃれ」と、真弓は静かにいった。
お菊は再び会釈して起った。起つ時に主人の顔をちらりと見ると、播磨は何か迷惑らしい顔をして畳の目を眺めていた。苦手の伯母と差向いの場合に、彼が人質に取られたような寂しい顔をして黙っているのは例の癖であるが、取分けて迷惑らしいその顔色がきょうのお菊の注意をひいた。