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ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,494 字 · 67 頁
「名は藤江という。年は十八で、器量もよい、行儀も好い。さすがは大久保殿の躾だけあって、気性も雄々しく見ゆる。伜が独身ならば、わが屋敷へも懇望したいのであるが、伊織助はもうこの秋頃には父になる筈じゃで是非がない。あれほどの娘を他家へやるのは残念、どうでもこちらの縁者にしたい。就いては播磨、くどくもいうようじゃが、伯母は悪いことは勧めぬ。あの娘を貰うては……」
お菊は眼が眩みそうになって、耳ががんがん鳴って来た。その耳にも播磨の返事ははっきり聞えた。
「折角でござりますが、飯田町の大久保殿は大身、所詮われわれ共の屋敷へは……」
「いや、その遠慮は要らぬことじゃ。大久保殿はあの通りの御仁、家柄の高下などを念に置かるる筈はない。殊にお身のこともよく知っておらるる。この伯母が頼みますとひと言いうたらきっと合点、それはわたしが受合います。どうじゃな」
この返事が一生の瀬戸である。お菊は息もしないでじっと聴いていると、播磨はすぐに返事をしなかった。伯母に督促されて、彼はこんなことを静かにいい出した。
「お言葉はよく判りましたが、余の儀とも違いまして、これは一生に一度のこと。