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ばんちょうさらやしき

番町皿屋敷

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,494 字 · 67 頁

青空文庫

「喧嘩は……」と、播磨は忙しくきいた。

「いや、何もない」と、先に立っている水野が笑いながら答えた。「きょうは一度も喧嘩はない。地獄の餓鬼も非時には有り付かれぬ。ははははは」

だんだん訊くと、それはこの群れではなく、ある侍が町人を捕えて何か無礼咎めをしていたのが、実際よりも大きい噂を伝えられたものと判ったので、播磨はいよいよ失望した。今は邪魔物の大身の槍を奴に担がせながら、水野を案内して屋敷へ帰る途中、いい知れない寂しさが犇々と彼の胸に迫って来た。

水野のほかに七人の客は座敷へ通された。賑かな酒宴は開かれた。その席にお菊の姿が見えないので、水野は主人にきいた。

「わしが贔屓の腰元は見えぬな」

「腰元……かの菊と申す腰元は、唯今手討にいたした」と、播磨は少し沈んだ声でいった。

「手討……。むごい仕置だな」と、水野も一文字の眉を少し皺めた。「どのような過ちをいたした」

高麗皿を打割った仔細を聞かされて、水野はいよいよ暗い顔をした。

「わしがその皿を見たいといった為に、女子一人を殺したか」

「殺しても仔細ござらぬ。罪のある者が殺さるるは人間の掟でござるよ」

播磨は俄かに大きい声を出して笑った。