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しらねのふもと

白峰の麓

大下 藤次郎

線上閱讀大下 藤次郎《白峰の麓(しらねのふもと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,238 字 · 45 頁

青空文庫

早川を渡ると、すぐ急傾斜の小さな坂で、その上は畑が作られて、麦の緑は浅い。石道をゆき、草の中をゆき、いよいよ雑木茂れる山にかかる。道は落葉に埋められ、今朝おりた霜の白きもあり、融けて濡れたのもある。とかく辷り勝ちで足の運びは鈍い。

山の傾斜がいかにも急であるために、道は右に左に細かく縫うてつけられてある。小さな沢を渡って十四、五丁ゆくと、樹は漸く太く、針葉樹も変っている。人の踏むこと少きためと、寒さの早いために、落葉は道を埋めて、二、三尺も積もっている。カサカサと徒に音のみ高くて、泳ぐような足つきでは一歩を運ぶにも困難である。剰え、二日以来足の痛みは、今朝宿を出た時から常ではないので、この急峻な山道では一方ならぬ苦痛を覚えた。途中の用意にもと、宿から持って来た「サイダー」を一口二口飲みながら上る。「サイダー」は甘味があり粘りがあって極めて不味だ、かかる時は冷き清水に越すものはない、自然は山人に「サイダー」にもまさる清水を、惜気もなく与えているのである。漸くにして樹木のまばらなところへ来た。沢を隔てて遥かの木立に、カラカラと石の崩れ落ちる音がする。