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はくじつむ
白日夢
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《白日夢(はくじつむ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,672 字 · 23 頁
晩春の頃だった。
私達――私と妻と男の児と女中との四人――は新らしい住居へ移転した。まだ道具もそう多くはなかったので、五六日で家の中は一通り片付いて、私はほっとした気持で、縁側に腰掛けて煙草を吹かしながら、庭の面をぼんやり眺めてみた。庭と云っても僅かに六七坪のものだったが、二三本の植込の木下に、鮮かな緑の雑草が、ぽつりぽつりと萠え出していた。それを見ていると、私の心は晴れやかになった。新らしい住居と共に新らしい幸福がやってくる、といったような思いが湧いてきた。そして向うの室にいた妻を呼びかけて、実際そう口に出してまで云った。
「ええ、」と妻は答えた、「今月からあなたの月給がふえるかも知れませんわ。」
「馬鹿!」
心持ち高い声で私は叱りつけたが、眼付で笑ってるのをどうすることも出来なかった。
暫くすると、此度は妻の方から云い出した。
「前のよりはいい家だけれど、欲を云えば、庭がも少し広くって、そして一軒建だと、ほんとにいいんですけれど……。」
「まあそれくらい我慢するさ。贅沢を云えばきりがないから。」
二階が六畳と三畳、階下が六畳二つ、それに二畳の玄関と三畳の女中室とがついていて、間取りもわりによく、たいして古汚くもなかったので、私達にはまあ相当な家だった。