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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《白蟻(しろあり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 54,099 字 · 106 頁
もちろんそれは、一種催眠誘示の手法に相違ないのだから、その間は、潜在意識が飛び出すのに、おそらく絶好な時機ではないだろうか――。そうして、彼女が第一の人生に、終止符を打つことができたとすると、当然鵜飼邦太郎の存在が、いよいよ幻から現実に移されねばならない。となると、またそこには、なにか充されていない空虚なものができてしまって、それが頭の皮質に、ガンガンと鳴り響いてくるのだった。ところが、そのとき滝人の頭の中に、ふと一つの観念が閃くと、知らず知らず残忍な微笑が、口の端を揺るがしはじめた。突然、彼女の背後から現われ出たものは、華麗な衣裳こそ身につけているが、その顔は二目と見られぬ、醜い邪悪なものだった。それが、いまも見るように、滝人の頸を中途で停めてしまったのである。すると、時江は嫂の素振りにいよいよ心元なく、ためらいながら吃りながらも、哀訴を続けた。
「後生ですわ、お嫂さま。どうかわたしをかばってくださいまし。私を、もうそんなに苦しめないで、承知してくださいましな」
「いいえいいえ、私にはできません。それはどうあってもできないことです」と滝人が、無性にいきばって首を振っているうちに、あの焔に勢いを添えようとするものが、いよいよ猛り立ってきた。