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まゆかくしのれい

眉かくしの霊

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《眉かくしの霊(まゆかくしのれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,284 字 · 51 頁

青空文庫

……

山も、空も氷を透すごとく澄みきって、松の葉、枯木の閃くばかり、晃々と陽がさしつつ、それで、ちらちらと白いものが飛んで、奥山に、熊が人立して、針を噴くような雪であった。

朝飯が済んでしばらくすると、境はしくしくと腹が疼みだした。――しばらくして、二三度はばかりへ通った。

あの、饂飩の祟りである。鶫を過食したためでは断じてない。二ぜん分を籠みにした生がえりのうどん粉の中毒らない法はない。お腹を圧えて、饂飩を思うと、思う下からチクチクと筋が動いて痛み出す。――もっとも、戸外は日当りに針が飛んでいようが、少々腹が痛もうが、我慢して、汽車に乗れないという容体ではなかったので。……ただ、誰も知らない。この宿の居心のいいのにつけて、どこかへのつらあてにと、逗留する気になったのである。

ところで座敷だが――その二度めだったか、厠のかえりに、わが座敷へ入ろうとして、三階の欄干から、ふと二階を覗くと、階子段の下に、開けた障子に、箒とはたきを立て掛けた、中の小座敷に炬燵があって、床の間が見通される。……床に行李と二つばかり重ねた、あせた萌葱の風呂敷づつみの、真田紐で中結わえをしたのがあって、旅商人と見える中年の男が、ずッぷり床を背負って当たっていると、向い合いに、一人の、中年増の女中がちょいと浮腰で、膝をついて、手さき