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いしだんにてっかん

石段に鉄管

小川 未明

線上閱讀小川 未明《石段に鉄管(いしだんにてっかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 2,584 字 · 6 頁

青空文庫

「なんだい、そんな石段……、減りはしないじゃないか?」

兄のほうの子供は、たまりかねて、十間も歩いて、こちらへきた時分、男のいる屋敷の方を見て叫びました。男が、石段が減る心配以外には、なにも自分たちをしかる理由がなく、また、自分たちはしかられるはずがないと思ったからです。

母親は、やはりうつむいて歩いていました。二人の子供は、それから、しばらく黙って、おとなしく歩いたのです。

あちらに、町の灯が、見えてきました。

もう、日は、暮れてしまって、西の空には一日の余炎もうすれてしまいました。そして、ものの蔭や、建物の蔭に、闇が暈取っていました。水道工事があるとみえて、鉄管が道ばたに、ところどころ転がっています。

三人は、うす暗い、建物の壁にそって歩いていました。そこの電信柱の下にも、長い機械のねているように、大きな鉄管が転がっていたのです。それは、三人が、もたれかかって休むのに、ちょうど適当のものでした。

「ここで、休んでいこう……。」と、母親は、二人の子供にいいました。

「こんな暗いところは、いやだなあ。」と、弟はいいました。

鉄管は、ここばかりでない。