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いしかりがわ

石狩川

本庄 陸男

線上閱讀本庄 陸男《石狩川(いしかりがわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 頁

青空文庫

二

と阿賀妻は、そういういざこざから話を避けて、煙草をふかしている男たちに云った、「何分とも空腹を覚える、先ず火を焚かずばなるまい、飯を炊いて貰いたい、明日のために身体を養わずばなりますまい」

「この場所で?」

「結構結構――」と阿賀妻はあたりを見まわした。選り好みはなかった。野宿の心を決めていた。

二

夜明けのうすあかりはいつまでもよどんでいた。立てこめた深い霧が、時間とともに渓谷を満すのであった。ぞっとするほど肩の冷たさを感じて玉目三郎は眼をさました。乳色の靄に隔てられて、赤い焚火のあり場所がひどく遠いもののように見えた。すぐに起きだした。その周囲にいる仲間の姿もぼやけていた。せせらぐ水音の中で、話している彼らの低い声もよく聞き取れなかった。

それがあたりを埋めた霧のためであると気づいたとき、彼はすっくと立ちあがった。不覚を取った恥かしさを覚えた。ごめん――と口の中で云って彼は流れのそばに蹲んだ。その小さな川の水を掬って口を漱ぎ、顔を洗った。深山の水は切れるような冷たさであった。洗われた肌には爽昧の巒気が浸みとおった。

「お目ざめか」

戸田老人が靄の中でふりかえってそう云った。