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ガラスをやぶるもの
硝子を破る者
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《硝子を破る者(ガラスをやぶるもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,761 字 · 14 頁
前大戦後の独逸の状況が一番明らかな例であって、その他にも沢山同様な例があるらしい。一旦法則として見出された以上、それは無慈悲なほど強力な動かし得ないものである。従ってそういう意味では、我が国のこれから先一年とか二年とかの期間は、前途極めて暗澹たるものがあることを覚悟しておく必要がある。
唯此処に、一つこういう考え方もあるように私には思われる。
社会科学の法則は、なるほどその通りであろう。自然科学の法則で、すべての物体は慣性をもっていて、一旦動き出したものは、それを止めるに力が要ることが立証されている。それと同じようなことが社会問題にもあると言えば、それは十分理解し得ることである。
敗戦の痛手が、戦後相当の期間を経て効いて来るということは、私もその通りであろうと思う。しかしその影響が効いて来ることと、それが現れて来ることとは、必ずしも全部が一致しなくてもよいのではないかという気がする。敗戦国では輸送の混乱が起こるのは避くべからざることであろう。従って汽車が混むのは当然である。しかしそのことと、窓硝子を割ることとは、必ずしも一致するとは限らない。影響が効いて来るのは、一つの法則であって、これは動かし得ないものとしても、それが現れて来るまでの過程の中には、制御可能な要素が沢山はいっているのではないかと思われる