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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

「敏感な麝香虫が騒ぎ出した。……いよいよ山尼の一隊が、迫って来たに相違ない」

こう云って窓まで身を寄せて行ったが、これも昔とそっくりであった。

こういう事件の行われている頃、秩父連山の一所でも、風変わりの事件が行われていた。

馬に乗った一式小一郎が、女馬子の君江に手綱をとらせ、谷の底を歩ませていたのである。

その左側の谷の上を、山駕籠を囲んだ同勢が、同じ方角へ進んで行く。冷泉華子の一隊である。

と、右側の谷の上を、同じような同勢が辿っている。北王子妙子の一隊である。

「いや面白い旅行だわい」こう云ったのは一式小一郎で、愉快そうな笑いを漂わせている。「危機一髪、もういけまい。こう思った時現われたのが、あの田安家の勢なのだからなあ。それに牽制されたので、一ツ橋の連中にも討って取られず、両家の者に左右を守られ、こんな塩梅に旅が出来る。どうも浮世って皮肉なものだ」

「結構な皮肉でございます。時々こういう皮肉があるので、ほんとに私達は助かります」

こう云ったのは君江である。君江の様子も愉快そうである。

「一ツ橋勢が谷へ下り、俺達を討って取ろうとすれば、田安家の連中が下りて来て、この俺達を救ってくれる。