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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

「槓杆一本を動かしさえすれば、大池の水が迸しり、流れ出るのでございます」

「とんでもない悪い槓杆で」小一郎はしかし愉快そうである、「いや俗流を追っ払うには、よい考案でございますよ。承われば、その他にも、いろいろの防備がございますそうで」

「はい」と云ったが桔梗様は、それについて話すのを好まないらしい。ヒョイと話題を変えてしまった。

「厭なお方でございますこと」こんな事を云い出した。

「は?」とちょっとばかり面喰らったが「どなたでございますな、厭な奴とは?」

「奴などと申しは致しません」――言葉を慎しめと云いたそうに、桔梗様はちょっと睨んだが、

「厭なお方でございますこと」

「は、どうやら私のことのようで?」

「はいはいさようでございますとも」

「すると」小一郎は故意らしく、誇張した悲しそうな表情をしたが、「美しいお声の令嬢に、恋を捧げるということは、あなたにはお気に召さないようで」

「嗜好に合いませんとも、妾にはね」

桔梗様も故意と空呆けた。「恋には捧げようがございますよ」

「承わりましょう、捧げようを?」

「跪座くのでございます」

「ああそれではこんなように」突然小一郎は跪座き、両手を上向けて捧げるようにしたが、「お受けくださいまし、私の恋を!」