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わたしのこじんしゅぎ

私の個人主義

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《私の個人主義(わたしのこじんしゅぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,467 字 · 46 頁

青空文庫

その訳を一口にお話しするとこうなります。金銭というものは至極重宝なもので、何へでも自由自在に融通が利く。たとえば今私がここで、相場をして十万円儲けたとすると、その十万円で家屋を立てる事もできるし、書籍を買う事もできるし、または花柳社界を賑わす事もできるし、つまりどんな形にでも変って行く事ができます。そのうちでも人間の精神を買う手段に使用できるのだから恐ろしいではありませんか。すなわちそれをふりまいて、人間の徳義心を買い占める、すなわちその人の魂を堕落させる道具とするのです。相場で儲けた金が徳義的倫理的に大きな威力をもって働らき得るとすれば、どうしても不都合な応用と云わなければならないかと思われます。思われるのですけれども、実際その通りに金が活動する以上は致し方がない。ただ金を所有している人が、相当の徳義心をもって、それを道義上害のないように使いこなすよりほかに、人心の腐敗を防ぐ道はなくなってしまうのです。それで私は金力には必ず責任がついて廻らなければならないといいたくなります。自分は今これだけの富の所有者であるが、それをこういう方面にこう使えば、こういう結果になるし、ああいう社会にああ用いればああいう影響があると呑み込むだけの見識を養成するばかりでなく、その見識に応じて、責任をもってわが富を所置しなけれ