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わたしのせんせい
私の先生
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《私の先生(わたしのせんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,888 字 · 6 頁
私は十三歳の時に、中国の尾道と云う町でそこの市立女学校にはいった。受持ちの教師が森要人と云うかなりな年配の人で、私たちには国語を教えてくれた。その頃、四十七、八歳位にはなっていられた方であったが、小さい私たちには大変おじいさんに見えて、安心してものを云うことが出来た。作文の時間になると、手紙や見舞文は書かせないで、何でも、自由なものを書けと云って、森先生は日向ぼっこをして呆んやり眼をつぶっていた。作文の時間がたびかさなって、生徒の書いたものがたまってゆくと、作文の時間の始めにかならず生徒の作品を一、二編ずつ読んでは、その一、二編について批評を加えるのが例になった。その読まれる作品は、たいてい私のものと、川添と云う少女のもので、私の作品が、たいていは家庭のことを書いているのに反して、川添と云う少女のは、森の梟とか幻想の虹とかいったハイカラなもので、私はその少女の作品から、「神秘的」なと云う愕くべき上品な言葉を知った。
十三歳の少女にとって、「神秘的」と云う言葉はなかなかの愕きであって、私はその川添と云う少女を随分尊敬したものだ。――森先生は、国語作文のほかに、珠算を時々教えていられたのだが尾道と云う町が商業都市なので、課外にこの珠算はどうしてもしなければならなかった。