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わたしのうまれたいえ
私の生まれた家
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《私の生まれた家(わたしのうまれたいえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 1,385 字 · 3 頁
真ん中に大きい食卓があり、食事のときだけ、その周囲をぐるりとかこんで、茣蓙を敷く。家族や店の人たち、それに女中を入れて、十四、五人の大家内であったが、食事のときは、一人か二人店番を残して、あと全員が、この板敷の茣蓙に坐って、一緒に食事をした。家中のものが、皆同じものを食うということを、父は自慢にしていた。もっとも、食事は、今から考えてみれば、ずいぶん粗末なものであった。店になっている主家の二階の一部に、十畳と八畳とがつづいた座敷があった。ここには縁側もついていて、家で一番立派な部屋であった。しかしこれは客間であって、使うことは、滅多になかった。
二人の男の子が、一人は物理学をやり、今一人は、考古学をやることになったので、この家は、とっくに人手に渡してしまった。まだ家は残っているが、すっかり模様換えをしたので、今は昔の姿もない。それにしても、私も弟も家とはずいぶん縁の遠い商売になったものである。
(昭和三十六年四月一日)