輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

わたしのおぼえがき

私の覚え書

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《私の覚え書(わたしのおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,746 字 · 18 頁

青空文庫

彼は、立ったまま、持って来た号外を声高に読み始めた。この時初めて、私共は、前日の地震が東京からの余波であったことを知った。号外によれば、一日の十二時二分前、東京及び湘南地方に大地震があり、多くの家屋が倒壊すると同時に、四十八箇所から火を発し、警視庁、帝劇、三越、白木屋、東京駅、帝国大学その他重要な建物全焼、宮城さえ今猶お燃えつつある。丸の内、海上ビルディング内だけでも死者数万人の見込み、東京市三分の二は全滅、加えて〔四字伏字〕、〔五字伏字〕が大挙して暴動を起し、爆弾を投じて、全市を火の海と化しつつあると、報じてある。そのどさくさ紛れに、〔四字伏字〕の噂さえ伝えられている。

余り突然の大事なので、喫驚することさえ忘れて聞いていた私は、「為めに全市に亙って戒厳令を敷き」と云う文句を耳にすると、俄かにぞっとするような恐怖を感じた。五つか六つの時、孫の薬とりに行った老婆が、電信柱に結びつけられ兵隊に剣付鉄砲で刺殺されたと云う、日比谷の焼打ちの時か何かの風聞を小耳に挟んで以来、戒厳令と云うことは、私に何とも云えない暗澹と惨虐さとを暗示するのだ。私は、一時に四方の薄暗さと冷気が身にこたえる涼台の上で、堅唾をのんで、報道を聞いた。