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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁
尊氏はそれだけでなく、やがては、将軍職のすべてをも最愛の子に譲るべく、その一つとしてこんな心支度もしていたのであったらしい。
「とくと、拝診申し上げましてござります」
さっそく召された二人の典医は、登子の案じ顔をみて言った。
「ままある急な御風熱と拝されます。肝、胃、腎、お悪いところはありませぬしお脈もいたってたしかなので」
「では、さしての心配にはおよびませぬか」
「元々、人いちばい根が御丈夫なお骨ぐみ。かえって、そのためつい御過労も積もりましょう。お熱さえ下がれば御本復は疑いございませぬ」
明け方までに二度、登子の手で熱い煎薬を服ませられたほかは、あくる日もあらかた、よく眠ってばかりいる尊氏だった。
そして三日目にはもう、
「起きる」
と言い出して、登子や義詮をこまらせた。けれど尊氏は、こうしているぶんにはよかろうと、ふとんの上に坐って、その日は、義詮をつかまえて帰さなかった。
義詮は、問われるままに、当面の政務や時局の処理方針などを、なにくれとなく答え、そして、かりに五十日や百日お寝みでも、決して時務に遅滞はいたしませぬ、諸大名も案じています、どうぞ充分御静養を取られますようにと、さすがもう世嗣の嫡男らしく自負して言った。