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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

もちろん、それぞれの消息が分ったのは、よほどあとになってからだが、北畠顕信と結城宗広が陪乗していた義良親王のお船は、あくる日、知多半島沖の篠島にただよい着いた。

またべつの船にいた北畠親房は、遠く、東国の常陸ノ浦まで流されてゆき、さらに宗良親王の一船は、駿河湾のほとりに着き、まもなく、宗良の御子は、遠州の井伊城へ入ったことが、後日に知れた。

「なにごとも天意でしょう。こんどの御災難で一行は四散してしまいましたが、思うにこれも神のおはからい以外なものではございますまい」

十二歳の義良親王には、恐ろしい御経験であったろう。その茫然なお顔へ、白髪の老将は、こうおなぐさめしぬいていた。結城宗広なのである。

宗広は、親王を奉じて、篠島から一たん伊勢へひっ返した。自然、颱風に吹き返されたような形だった。ところが、その十一月、この老将は伊勢で病んで、ついに帰らぬ人になってしまった。――かの亡き将軍顕家とともに、みちのくの長い年月から征途の艱苦も、ひとつにして来た宗広なので、親王は、

「じいよ。じいよ」

と、そのなきがらに取りすがって、親に別れるように泣いた。童心まだ十二の御分別には、どうしてこのじいは、こんなくるしい道ばかりあるいてついに死んでしまったのか、自分もそうしなければならないのか、おわかりになれなかったに違い