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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

人間の心にひそむ権力の魔魅のあやしい作用が、こんなところにも複雑な仮面のもとにうごくのだった。

かつての、頼朝の東大寺大仏供養のばあいでも、

――天下の大名武臣の功ある者を選集して、順序、その行装の随兵となす

と称揚され、随行の一番から十二番までの諸将は、家々の面目として序列を誇り“尊卑分脈系図”にさえそれが注記されたほどだったから、この日、天龍寺落慶式に、尊氏と直義の車に附随して行った諸大名も、みな列をかざり身を粧い、今日の参加を、一代のほまれかのように気負っていた。

だから、列の順序が、ひとつ間違っても、すぐ喧嘩となりかねない緊張ぶりと、また混雑で、時刻はおくれ、しかも道筋では、見物の桟敷やら人波でしばしば停頓を見、ために、尊氏直義の車が天龍寺についたのは夕がたになってしまい、全山の僧侶は、八十四間の山門廊から、これを松明で迎えたような有様だった。

剣持役の南遠江守をうしろに、八葉の車から降りて入場する大納言尊氏、また、副将軍直義のすがたに、人々は一せいに乱声(ときの声に合せて急テンポに楽を奏す)を発した。

式は夜になって、終りの舞楽がすんだのは、子ノ刻(深夜十二時)だった。