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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁
亭主どもは、いきまいて、寄り寄り、亭主会議をひらいたが、扶持取りのかなしさ、女房未練、かつは時めく高家の門を、われから追ン出る勇気もなく、ついつい泣き寝入りに終ったというのである。
「塵塚物語」は、史書でもなければ風俗書でもない。もちろん嘘談は知れきっているが、しかしこのうちにも、いかに当時の女子が物品視されているかがうかがわれる。さらには、師直の婦女掠奪にむすびつけて、楠木正行との情話に仕立てあげてある「弁ノ内侍」のことなどもまた、話は優雅にできているが、それも女子を一個の品とみている時代の女性観を知る以外には、さしての価値もないものといっていい。
なにしろ師直の不人望たるや、かくの如しであった。けれど彼も時代の一人物だったにはちがいない。なぜならば、とかくの不評判もあり、巷では、
夜ごと夜ごとの忍び輿
執事の殿の宮めぐり
畏む御幣ふとやかに
手向けを受けぬ神もなし
と、彼の女通いが、童謡にまで歌われているのを知っても、いぜん尊氏が、将軍家執事の権を、彼にまかせていたのでもそれは知れる。彼にかわるほどな才幹は、他になかったものであろう。
むしろ、尊氏から見て、警戒されていたのは、勝者の立場に驕り、旧文化や貴族を侮辱することに惨酷なよろこびすら持っているほかの婆娑羅大名や武士どもではなかったろうか。