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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

と、大声で叱ッた。

一団の影は立ちよどんだ。そのうちには、土岐ノ弾正少弼頼遠、二階堂下野ノ判官行春などという者がいた。どっちも歴々な武家だった。

「あっ」

行春は、反射的に馬を下りてひざまずいたが、頼遠のほうは大いに酔っていた。のみならず、師直や道誉とならんで、洛中の三婆娑羅といわれていた男だけに、かえって、車副の人々へ、こう威たけ高に呶喝した。

「道は暗いが目はあるだろう。おれは土岐ノ頼遠だ。この頼遠に下馬せよとは、何奴がいうのか」

「やあ、推参な。これは院の御車、院の御幸なるぞ」

「なに、院だと。院か犬か。犬ならば追物射の的でしかない。一つ射てくれようか」

とたんに、頼遠のたずさえていた笠懸射の弓が、発矢と唸るものを放った。矢は御車の廂に立った。――ひやと随身たちが道をよけたすきに、「わははは」「あははは」と一団は風のごとく駈け去ってしまっていた。

武士の乱暴沙汰も極まれりというものである。こんなふうでは、上皇の御外出もめったにできぬと、院の西園寺大納言公重は、そのご幕府へきびしく注意を求めていた。

すでに事件は、直義の耳にも入っていた。捨ておかれぬことと、内々、処置を考えていたところだったので、