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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

それはもうだいぶ前。――天龍寺造営が着手される前年のことだったが。

秋は十月の頃で紅葉のさかりだった。例の、人目を驚かすばかりな風流行装で、小鷹狩りの帰りを、佐々木道誉、秀綱の父子が、従者大勢と共に東山の妙法院のそとを通りかけた。

みな酔っていたにちがいあるまい。でなければ酔狂すぎる。供の若党輩の数名が、そこの築土にのぼって南庭のみごとな紅葉を折りちらした。

当然、坊官はだまっていない。列を追ッかけて来て「――狼藉者を渡せ」と罵り「ここをどこと思う。もったいなくも御連枝の宮、すなわち天台座主の亮性法親王のお住居なるを」と、その乱暴をたしなめた。

こう聞くと、道誉以下、武士どもはかえってよけい揶揄ってみたくなるらしい。坊官たちを撲りつけてさかんに嘲弄した。すると寺門の侍や法師らはさらにその数を挙げて加勢に出て来た。ために大乱闘となり、はては妙法院御所へ無謀な焼討ちを仕かけてしまった。

――累代門跡ノ重宝モ、コノ夜、一灰燼ニ帰シタリ、と公卿日記はみな痛記している。

翌年四月。

道誉と秀綱は、このことで流罪になった。

処罰は叡山と幕府のあいだで長い紛糾を見、尊氏としては、道誉をかばい抜いたのだが、山門大衆の嗷訴に押されて、ついに流罪のほかなくなったものだった。