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かがくとぶんがく
科学と文学
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《科学と文学(かがくとぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 頁
すなわち、文学が芸術であるためには、それは人間に有用な真実その物の記録でなければならない。また逆にすべての真実なる記録はすべて芸術であるというのである。どんな空想的な夢物語でも多感な抒情詩でも、それが真の記録であるゆえに有益であり同時に美しいというのである。ここまではおそらく多くの読者も少なくも多少の条件付きでは首肯されるであろうと思われる。しかし、さらに一歩を進めて、科学上の傑出した著述はすべて芸術であると言おうとすれば、これにはおそらく容易に同感を表しかねる人が多いであろうと思われる。こういう見方はしかし、実はそれほど無稽なものでないということは、すでに自分のみならず、他の人もしばしば論じたことである。
手近な例を取ってみても、ファーブルの昆虫記や、チンダルの氷河記を読む人は、その内容が科学であると同時に芸術であることを感得するであろう。ダーウィンの「種の始源」はたしかに一つの文学でもある。ウェーゲナーの「大陸移動論」は下手の小説よりは、たしかに芸術的である。そうしてまた、ある特別な科学国の「国語」の読める人にとっては、アインシュタインの相対性原理の論文でも、ブロイーの波動力学の論文でも、それを読んで一種無上の美しさを感じる人があるのをとがめるわけにはゆかないであろうと思う。