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いねのいちにち
稲の一日
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《稲の一日(いねのいちにち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,013 字 · 20 頁
もちろん実際には回収に際して流亡する分もあるので、それだけは補給する必要がある。しかし原則としては、貴重元素は回収して使うというのが、工業の立前である。何だか話が巧すぎるようであるが、理窟はたしかにそうである。そしてこれと同じことを、極めて原始的な形で、われわれの祖先は、二千年来日本の水田において行なってきていたのである。というのは、加里や燐は、もともとわが国では非常に乏しい元素であって、そういうものの輸入の無かった明治以前の時代には、その補給の道が魚肥以外には殆んど無かったはずである。その難点をわれわれの祖先は、藁を水田に還元することによって、一応の解決をつけて、古事記以前の時代からの水田稲作を、今日まで続けて来ていたわけである。一年や二年燐酸の輸入が杜絶したといって騒ぐのは考えものである。人工米工業においては、加里や燐の輸入などを懇請しなくてもすむようにしたいものである。
肥料として加里や燐などを必要とする理由の一つとして、茎を丈夫にするというような点も挙げられている。稲の品種改良のことは、専門外のこととて、詳しいことは知らないが、多収穫性とか早熟性とかいう方面の改良の他に、茎を丈夫にしたり、冷害に耐えたり、病害虫に対する抵抗性を増したりする方向にも、随分力をつくしていることと思われる。