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りゅう
竜
線上閱讀芥川 竜之介《竜(りゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,397 字 · 19 頁
「その内に追い追い日数が経って、とうとう竜の天上する三月三日になってしまいました。そこで恵印は約束の手前、今更ほかに致し方もございませんから、渋々叔母の尼の伴をして、猿沢の池が一目に見えるあの興福寺の南大門の石段の上へ参りました。丁度その日は空もほがらかに晴れ渡って、門の風鐸を鳴らすほどの風さえ吹く気色はございませんでしたが、それでも今日と云う今日を待ち兼ねていた見物は、奈良の町は申すに及ばず、河内、和泉、摂津、播磨、山城、近江、丹波の国々からも押し寄せて参ったのでございましょう。石段の上に立って眺めますと、見渡す限り西も東も一面の人の海で、それがまた末はほのぼのと霞をかけた二条の大路のはてのはてまで、ありとあらゆる烏帽子の波をざわめかせて居るのでございます。と思うとそのところどころには、青糸毛だの、赤糸毛だの、あるいはまた栴檀庇だのの数寄を凝らした牛車が、のっしりとあたりの人波を抑えて、屋形に打った金銀の金具を折からうららかな春の日ざしに、眩ゆくきらめかせて居りました。そのほか、日傘をかざすもの、平張を空に張り渡すもの、あるいはまた仰々しく桟敷を路に連ねるもの――まるで目の下の池のまわりは時ならない加茂の祭でも渡りそうな景色でございます。