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かさおりはんくろう
笠折半九郎
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《笠折半九郎(かさおりはんくろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,004 字 · 26 頁
――いけなかった、やり過ごした。
そう思った。けれどまた直ぐそのあとから、新しい忿がこみあげて来た。小次郎の言葉には親しい者だけに共通する意地悪さがあった、己が云うなら許されるだろうという、狎れた意地悪さが隠されていた。
――どれほど親しい間柄でも、云って宜いことと悪いことがある、武士の心得を座談にして弄ぶ法はない。
彼は武骨者で茶花風流には暗かった。武士には要のないものだと云ってはいたが、そういうものに興味を持てないことは、自分でも私に弱点だと思っていた、そしてそう自覚しているだけ余計に、遊芸に類するものを軽侮していたのである。……つまり小次郎はそれを承知して、彼のいちばん痛いところを突いたのである。
「明日の朝五時に起して呉れ」
弥五兵衛にそう云って、半九郎は宵のうちに寝た。
なかなか眠れなかった。
ともすると苦い後悔の感じが湧いて来るので、なるべく忿怒を煽るようなことだけを考えた、空想は鼠ヶ島の決闘の場面まで発展した、無二の友達同志が刃を噛合せている様や、血まみれになって倒れている小次郎の姿などは、空想のなかで一種の快感をさえ呼起した。
そうしているうちに、いつか考え疲れて眠ってしまったらしい。