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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《第二の接吻(だいにのせっぷん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 頁
そういって、一枝を抱き上げようとしても、彼女はすべての筋肉をだらけさせて、村川の手が少しでもゆるむと、またペッタリと縁に腰をかけてしまった。
彼は、一枝を去らせることは絶望した。仕方なく四阿をはなれ、すぐそばの小高い芝生の小山に上り、折からさしのぼった月の光をたよりに、近よって来るのかもしれない倭文子の姿をむさぼるように求めたが、だんだんハッキリとして来るどの小径、どの樹かげにも、それらしいものはなかった。時計を見ると、一枝とのいきさつに時が経って、十時を二十分も廻っていた。
彼は、腸がブツブツ音を出して切れるように苦しかった。それをこらえて、五分待ち十分待った。ふと、向うの樹陰に人影が動いたので、ハッと思って目を定めると、それは先刻あんなに彼を手こずらせた一枝が、今やっと四阿を出て、台所の方へトボトボ歩いて行くのだった。
彼は、不快な邪魔物であった彼女を追いかけて行って、地上にたたきつけてやりたかった。時を見ると、十時四十分である。でもとにかく一枝の去ったことはうれしかった。気が少し落ちついた。一枝の去ったのを見定めて、きっと来てくれる倭文子だろうと、新しい希望を胸に湧かして待っていたが、五分経ち十分経ち、彼の袖が夜露にしめるまで待ったけれども、倭文子はとうとう来なかった。