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かんざしをさしたへび
簪を挿した蛇
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《簪を挿した蛇(かんざしをさしたへび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,681 字 · 20 頁
草履をはかない素足の子供たちも沢山いた。
先生たちは、一人ずつ交代に宿直することになっていた。可愛がってくれる受持の先生が宿直をされた次の朝は、よく六時頃に学校へ行って、宿直室で八時の授業開始まで遊んだものであった。若いざん切り頭の先生は、蒲団を隅の方へ押しやって、褐い畳の上で火鉢で御飯をたいていた。そして飯の出来るまでと言って、将棋を教えてくれたりしたものであった。
ピアノなどというものは、名前も聞いたことがなかったし、理科の実験などももちろんなかった。仏教の盛んな土地だけに、町全体の雰囲気には近代の匂いが全くなく、科学などというものには、凡そ無縁の土地であった。子供たちは、大人の読み残した貸本の講談本を盗み読むくらいで、その当時あこがれの的であった『少年世界』や『日本少年』を毎月とっているなどという子供は、級に一人か二人という程度であった。それは遥かなる土地の文明の余光であって、年寄りたちがお説教できいてくる仏教の因果話と地獄極楽の絵とで培われた子供たちの頭には、幻惑的な閃光をもたらすものであった。
そういう中にあって、たしか五年生の時だったかと思うが、珍しい先生が新しくみえて、その先生が私たちの受持となった。