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そこつひょうばんき

粗忽評判記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《粗忽評判記(そこつひょうばんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,942 字 · 28 頁

青空文庫

「黙れ、出雲守の酒を飲みながら余の酒を飲まぬとは云わさんぞ、きゃつめが御厩奉行になってどんな心持か、そのほうも一緒に味わってやれ」

「――御厩奉行」ああと彼は声をあげた。

「出雲めがまんまと為止めおったぞ」

久之進は眼を伏せた。それから低いこえで、お相手を仕りますと答えた。明敬も酒を嗜むほうではない、しかし喧嘩相手の信継が眼前に出世したことを思うと、酒でも飲まずにはいられなかったらしい。これもまた我儘育ちの大名の一癖である。……多くも飲まなかったが悪酔いをした、むろんそんなことで胸の忿懣は納るはずはなかった。

「――久之進、使者に行け」

「いずれへ参りまする」

「愛宕下の志摩侯を招いて来い」

愛宕下の松平志摩守、これは殿中で明敬と話のうまの合う人だった。ときには互いの邸を訪ね合うこともある、もう四十に近い年だが無役のままで、明敬としては今の不満を語るのにもってこいの相手だった。

「仰せではございますがもはや夕景でもあり、お上にもお酔いあそばしたごようすゆえ、明日御茶になりと御招待遊ばしますよう」

「そうか、――」明敬は案外穏かに頷いた。「ではそうしよう、使者には今宵のうちに参っておけ、申付けたぞ」