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ふんにょうたん

糞尿譚

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《糞尿譚(ふんにょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,974 字 · 99 頁

青空文庫

禿げた親父で、五日に一度位ずつ泊って帰ると、おかみさんは話しました、私は未だに妾暮らしをしている照葉が、その女は照葉という名前でした、なんとなく可哀そうになりましたが、私がこんな商売であるばかりに見た女の秘密がわかり、いやな気がいたしました、と、彦太郎は話の中頃から回顧的な調子になり、妙にしんみりとして来たが、話して居るうちに、なんとなしに胸が迫って来て、涙が出そうになって来て、どうにも仕方がなく、ごまかすように何度も手で眼をこすった。いいお話ね、と芸者も釣りこまれたように、同じ境涯を辿りつつあるものの共感を持ったのであろうか、憮然たる表情をしてためいきをつくように云った。なんだ、馬鹿にしんみりしてしまったじゃないか、痴漢の便所覗きが新派悲劇になろうと思わなかった、酔が醒めてしまうじゃないか、飲みなおしだ、と阿部は大声をあげたが、ほんとうだ、あんた大いに飲みましょう、と彦太郎ももう人の好さそうな笑い顔に返って、ひとつうたいましょうかな、と云ったので、芸者が三味線を取りに立って行った。三味線が来ると、めいめいうたい出したが、阿部が女に三味線を弾かせて、岸の柳を頼りない節まわしでうたうのを聞いているうちに、あまり長いので、横になった彦太郎はいつの間にか眠ってしまった。