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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《紅毛傾城(こうもうけいせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 頁
そうして、いつとなく思い出さえも薄らいでしまって、今ではフローラも、慈悲太郎の唇を、おのが間にはさむような間柄になった。
慈悲太郎は、兄とはちがって、白いふっくらとした肉で包まれ、むしろ、女性的に見えるのだが、その弾力、薄絹のような滑りに、フローラはじりじりと酔わされていった。
その日は、空が青い光を放ったように思われ、波濤の頂きが、薔薇色のうねりを立てていた。
「こうして、白い雪のようなお肌の上に、手を置いておりますと、私の手が、なんとなく汚らしく、それに、黄色く見えるようでございますわ。早く奥方様のお許しをうけて、あなた様のお肌をほんとうに、私のものとしたいくらいでございますのよ」
と悩まし気な、視線を彼に投げ、ほんのりと、紅味に染んだ見交わしの中で、その眼は、碧い炎となって燃え上がった。そして、片肌を脱がせ、紗の襦袢口から差し入れた掌を、やんわりと肩の上に置いたとき、その瞬間フローラは、ハッとなって眼をつむった。
彼女は、臆病な獣物が、何ものかを避けるように飛びのいて、ふたたび、その忌まわしい場所に視線を向けようとはしなかったのである。
というのは彼女が手を引くと同時に、窓越しに差し出された、一つの、煙のような掌を見たからであった。