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じゅんすいしょうせつろん
純粋小説論
横光 利一
線上閱讀横光 利一《純粋小説論(じゅんすいしょうせつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,519 字 · 24 頁
先ずあるなら、一般妥当と認められる理智の批判に耐え得られぬもの、とでも解するより今のところ仕方もない。
私はこのような概念の詮索から始めるのは、面倒なので、通俗小説と純文学とを一つにしたもの、このものこそ今後の文学だと云ったのであるが、誤解を招いた責任は、私も持たねばならぬ。けれども、私の犯したこの冒険をせずして、純文学の概念に移ることは、容易ならぬ事業である。私はこの概念を明瞭にするためにここに罪と罰を引こう。ドストエフスキイの罪と罰という小説を、今私は読みつつあるところだが、この小説には、通俗小説の概念の根柢をなすところの、偶然(一時性)ということが、実に最初から多いのである。思わぬ人物がその小説の中で、どうしても是非その場合に出現しなければ、役に立たぬと思うときあつらえ向きに、ひょっこり現れ、しかも、不意に唐突なことばかりをやるという風の、一見世人の妥当な理智の批判に耐え得ぬような、いわゆる感傷性を備えた現れ方をして、われわれ読者を喜ばす。先ずどこから云っても、通俗小説の二大要素である偶然と感傷性とを多分に含んでいる。そうであるにもかかわらず、これこそ純文学よりも一層高級な、純粋小説の範とも云わるべき優れた作品であると、何人にも思わせるのである。