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むらさきだいなごん
紫大納言
線上閱讀坂口 安吾《紫大納言(むらさきだいなごん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,899 字 · 26 頁
「わたくしは急がなければなりませぬ」必死であった。「姫は待ちわびていらせられます」
「なんの、三日や五日のことが」と、大納言は天女の悲しむありさまを見て、満悦のために、不遜な笑を鼻皺にきざんだ。「浦島は乙姫の館に三日泊って、それが地上の三百年に当っていたという話ではありませんか。まして、月の国では、地上の三千年が三日ほどにも当りますまい。五日はおろか、十日、ひと月の御滞在でも、月の国では、姫君が、くさめを遊ばすあいだです。疑は人間にありとか、月の世界にくらべては、下界はただ卑しく汚い所ではありますが、又、それなりの風情もあれば楽しみもあります。恋のやみじに惑いもすれば、いとしい人に拗ねてもみる。聞き及んだところでは、天上界はあなたのような乙女ばかりで男のいない処だとか、はてさて、それでは、あやがない。御覧じませ。あの山の端にかかっているあなたの国の月光が、なんと、私共の地上では、娘と男のはるかな想いを結びあわせる糸ともなれば、恋の涙を真珠にかえる役目もします。魚心あれば水心とは申しませぬ。五日の後に、この笛は、きっとおてもとに返しましょう。まず、それまでは、下界の風にも吹かれてみて、人間共のかげろうのいとなみを後日の笑いぐさになさいませ」