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ささめゆき

細雪

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《細雪(ささめゆき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 150,580 字 · 287 頁

青空文庫

「こいさん幾つになりはりましてん」

「もうそない若いことあれしまへんで。………」

「わたし覚えてはりますか」

「はあ、知ってます、お栄さんでっしゃろ。………あの時分から、ちょっとも変ってはれしまへんなあ」

「変らんことがおまっかいな、ええお婆ちゃんになりましたがな。―――こいさんは何で東京へ行かはれしまへんのん」

「当分蘆屋の中姉ちゃんとこに置いて貰うてまんねん」

「そうでっか。本家の兄さんや姉さんが行ってしまやはって、えらい淋しいことですな」

妙子は改札口を出てお栄に別れて、二三歩行きかけたところで、

「妙子さんじゃありませんか」

と、又一人の紳士に呼び止められた。

「どうも暫く。僕関原です。この度は蒔岡君がご栄転で、―――」

関原と云うのは辰雄の大学時代の同窓で、高麗橋筋にある三菱系の某会社に勤めていた関係から、辰雄が蒔岡家へ養子に来た当座は、まだ独身で始終遊びに来、鶴子の妹達とも馴染んでいたものであったが、その後結婚し、倫敦支店勤務を命ぜられて五六年英国に滞在し、つい二三箇月前に大阪の本社へ呼び戻されたばかりの男で、妙子は彼が最近帰朝した噂は聞いていたけれども、会うのは矢張八九年ぶりであった。