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しゅちんのズボン

繻珍のズボン

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《繻珍のズボン(しゅちんのズボン)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,932 字 · 8 頁

青空文庫

の出た年に「日本道徳論」を著している。二十八年に「徳学講義」を著し、例えば同じころ「希臘二賢の語に就て」を書いたりしていた津田真道やその頃大いに活動していた中江兆民などとは、人生の見かたの方向に於ては対蹠的な立場に立つようになったのであった。明治二十年前後の一つのリアクシォンの時代は明治初年の啓蒙家たちの思想の進路に極めて微妙に作用しているのであるが、西村茂樹というひとなどの行きかたは、その一方の典型をなしているものではないだろうか。

そういうような全く文化史風な興味が、祖父に対する私の心持に加わって来るとともに、あの時代を生きた一人の学者の姿として、祖母からきいているその家庭生活の雰囲気の渦まで、明治文化史の插画のように想い起されて来た。

曾祖父は堀田の青鬼と綽名された槍術家だった由。息子は体が弱くて、父である青鬼先生に佐分利流の稽古をつけられて度々卒倒するので、これは武術より学問へ進む方がよかろうということになって、二十歳前後には安井息軒についていたらしい。やがて洋学に志を立て、佐久間象山の弟子になって、西洋砲術の免許を得たりしている。洋学を習いはじめたのは三十四歳、手塚律蔵という人が先生であった。