輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ろうねん

老年

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《老年(ろうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,582 字 · 7 頁

青空文庫

から今ではこの料理屋に引きとられて、楽隠居の身の上になっている。中洲の大将の話では、子供心にも忘れないのは、その頃盛りだった房さんが、神田祭の晩肌守りに「野路の村雨」のゆかたで喉をきかせた時だったと云うが、この頃はめっきり老いこんで、すきな歌沢もめったに謡わなくなったし、一頃凝った鶯もいつの間にか飼わなくなった。かわりめ毎に覗き覗きした芝居も、成田屋や五代目がなくなってからは、行く張合がなくなったのであろう。今も、黄いろい秩父の対の着物に茶博多の帯で、末座にすわって聞いているのを見ると、どうしても、一生を放蕩と遊芸とに費した人とは思われない。中洲の大将や小川の旦那が、「房さん、板新道の――何とか云った…そうそう八重次お菊。久しぶりであの話でも伺おうじゃありませんか。」などと、話しかけても、「いや、もう、当節はから意気地がなくなりまして。」と、禿頭をなでながら、小さな体を一層小さくするばかりである。

それでも妙なもので、二段三段ときいてゆくうちに、「黒髪のみだれていまのものおもい」だの、「夜さこいと云う字を金糸でぬわせ、裾に清十郎とねたところ」だのと云う、なまめいた文句を、二の上った、かげへかげへとまわってゆく三味線の音につれて、語ってゆく、さびた声が久しく眠っていたこの老人の心を、少しずつ目ざませて行っ