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ろうねん
老年
線上閱讀芥川 竜之介《老年(ろうねん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,582 字 · 7 頁
川の空をちりちりと銀の鋏をつかうように、二声ほど千鳥が鳴いたあとは、三味線の声さえ聞えず戸外も内外もしんとなった。きこえるのは、薮柑子の紅い実をうずめる雪の音、雪の上にふる雪の音、八つ手の葉をすべる雪の音が、ミシン針のひびくようにかすかな囁きをかわすばかり、話し声はその中をしのびやかにつづくのである。
「猫の水のむ音でなし。」と小川の旦那が呟いた。足をとめてきいていると声は、どうやら右手の障子の中からするらしい。それは、とぎれ勝ちながら、こう聞えるのである。
「何をすねてるんだってことよ。そう泣いてばかりいちゃあ、仕様ねえわさ。なに、お前さんは紀の国屋の奴さんとわけがある……冗談云っちゃいけねえ。奴のようなばばあをどうするものかな。さましておいて、たんとおあがんなはいだと。さあそうきくから悪いわな。自体、お前と云うものがあるのに、外へ女をこしらえてすむ訳のものじゃあねえ。そもそもの馴初めがさ。歌沢の浚いで己が「わがもの」を語った。あの時お前が……」
「房的だぜ。」
「年をとったって、隅へはおけませんや。」小川の旦那もこう云いながら、細目にあいている障子の内を、及び腰にそっと覗きこんだ。