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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《聞書抄(ききがきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,821 字 · 210 頁
そうして置いて、西国か東国の辺鄙な田舎へ御所領を仰せ出だされ、後々は流人のようにしてしまわれるでござりましょう。その期に及んで何事を思し立たれましても、追い付きは致しませぬぞ。今御威勢の強い時に、大名共にも内々情をおかけなされ、御心底をお打ち明けなされて、屹度お頼みなされませ。弓取と申す者は、親を討ち、子を殺しましょうとも、国を治め、天下を保つのが習いとこそ承れ。此の儀を御承引下されましたら、お味方に参る者共は某が指図いたしましょう。太閤お取り立ての武士の中にも、過分の勲功を立てながら左程の御恩賞にも与らず、忠なき輩が時を得顔に威張り散らしておりますのを恨んでいる者共が、随分多いのでござりますと、申したのでござりました。
挿絵
すると関白殿はおん枕を押し除けられ、蓐の上に端坐遊ばして仰っしゃいますのに、そちが申すことも一往聞えているけれども、養子と云うても伯父甥の間で、血がつながっていることだし、幼い時より莫大の御恩を蒙っている某として、何とて左様な企てをなすべきや。その上大坂や伏見のお城は、日本一の名城ではないか。たとい事を起したところで、味方に馳せ参ずる者は、日本国中の諸大名のうち、三分の一はよもあるまい。