輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《肌色の月(はだいろのつき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 頁

青空文庫

ひきこまれるような睡気がつき、まわりの風景がよろめいてきたところで、そろりと水の中に落ちこむ。たぶん飛沫も立たないだろう。かすかな水音。それで事は終る。

広間の中はまだ闇だが、どこかに灰白い夜明けのけはいがあった。

久美子はベッドにしていた長椅子から起きあがると、風呂場へ行ってジャンパーに着換え、音のしないように玄関の扉をあけてロッジを出た。

湖に朝靄がたち、はてしないほど広々としていた。久美子は棒杭のある地形をおぼえておいたつもりだったが、靄の中では、どこもおなじような岸に見え、なかなかその場所に行きつけなかった。

「急がないと、夜が明ける」

久美子は焦り気味になって、菱の生えているところをさまよっているうちに、朽木の根っ子につまずいて、深いところへ落ちこんだ。いやというほど水を飲み、化けそこなった水の精のように、髪から滴をたらしながら岸に這いあがると、気ぬけがして、ひと時、茫然と草の中に坐っていた。

「おお、いやだ」

いかにもぶざまで、情けなくて泣きたくなる。間もなく棒杭に行きあたったが、誰か早く漕ぎだしたのだとみえて、ボートはそこになかった。

ロッジへ帰ってピジャマに着換え、濡れものをひとまとめにして浴槽の中へ置き、気のない顔でコオフィを沸しにかかった。